第78回独立展

2010年10月13日(水)〜10月25日(月)
国立新美術館

「ROSE GARDEN」F200号

【展誌エッセー】

 虜

大久保 宏美

 ちょっと見ただけで、心をググッと捕まれる時がある。一瞬で鷲掴みにされるコトがある。好きなモノなんてジワジワとはやって来ない。5歳から始まる鷲掴み遍歴。赤塚不二夫→楳図かずお→マティス→横尾忠則→ブラック→湯村輝彦→山口薫→ヤンセン→シーレ→有元利夫→野見山暁治→みうらじゅん→中西夏之→立花ハジメ→智内兄助→深津真也→葛西薫→開光一→國司華子。15年前位に“鷲掴まれ”は止まっているが、この矢印は今もこれからもグルグルと永遠に回って行くのだ。
 私と絵との出会いは、私と音との出会いくらいに漠然として、すべてのモノと並列にすでにそこにある。歌を唄うことだって楽器を奏でることだって、文章を書くことだって料理を作ることだって、モノを作るすべてにおいて始まるキッカケが無いままに自然と始まっていて、いつでもそばにある。「マティスの白とバラ色の頭部」と「岡山の白桃」と「内田光子のピアノ」が、どれかひとつを選べないほど平等に存在するように。
 それでも絵画を選んで、描いている。並列に好きなモノは今では制作の肥となっている。それを理由に栄養ばかりつけている時期もある。いつまでも充電している場合ではないゾ、と下塗り状態の立ちはだかるキャンバスの前で、この文章を書くスーパー暑い夏。