第80回記念独立展

2012年10月17日(水)〜10月29日(月)
国立新美術館

「パーソナルランディングサイト」F200号

【展誌エッセー】

 ネクストステージ

大久保 宏美

 たくさんの人たちが絵を持ち寄って集まって賑やかに展覧会を行っているのはここだけの話ではなく全国津々浦々、数えきれないほどの公募展と呼ばれる展覧会が行われ、そのほかにも世の中には絵を描いている人たちが物凄く大勢いるということに驚かされる。その、絵を描いている人たちの大半は絵を“教えている”か“教わっている”かのどちらかだということにふと気づいた。中には、教えているのに教わっているという人もいたり、教わったほうが良いのに教えているという人を見つけたりもする。唯一、教わっても教えてもいないという自分のポジションを売りにしていたことが昨年から急変、私も教える側の人となった。自分の中では人生の次のステージ(面)に進んだ気で、バージョンアップを図っている。
 前のステージはもう済んだことと、先へ先へと進んでいると、こうした節目で振り返ることを余儀なくされる。嬉しかった出来事や素敵な思出と共に、普段は見ないようにしてきたことや忘却の彼方に押しやったことなどが湧いて出て来たりして、困る。会員という立場になったことと引き換えに、本当は解決していない物事を置き去りにして来たのではないか、ただ考えなくて済む場所に少し移動しただけではないか、などと、3枚の大作で勝負に挑んでいる人たちと今の自分を比べて考える。芸術は競争の道具ではないし、相対評価なんてしたくもされたくもない。それでも、ここを選んで、ここに居る、たぶんこの先も。それは、信頼している人にかけてもらった数々の大切な言葉があるからだ。そのうち苦い記憶は振るい落とされ、甘い出来事だけがいつでも取り出せるようになるのだろう。歴史的な瞬間に何かを語るには、あまりにも若輩者で気が重い。