2013年10月16日(水)〜10月28日(月)
国立新美術館
「スピニングホイール リターンズ」F200号
迷える仔羊には旅をさせよ
大久保 宏美
遠い地の展覧会に、足を運ばず自分の作品だけ敢えて送り出すことが多々ある。人の一生分の移動距離が決められているような気がして、遠出を避けることがある。
小さい頃の遠出と言えば、まずは多摩川を渡ることだ。一番前に陣取った横須賀線の運転席脇から見る窓越しには、高い確率で線路に猫が轢かれていた。電車でも自動車でも、多摩川を渡る時は今でも、それが仕事だとしても少しの浮かれた遠足気分は否めない。横に流れてゆく風景を見るよりも、前方に突き進む情景がずっと好きだ。
日常が、人よりルーズで浮遊しているようなので、旅というものに開放感やメリハリを求めていないのかもしれない。過日急逝されたK先生には生前、日中銀座でお会いすると「キミはいつもプラプラしているようにみえるけど仕事してるのかね!?」と釘を刺されたものだが、時間に追われているように見えない、とイイ様に解釈し、これからも変わらずそうしていようと、現在に至っている。
そういえばロシアに旅した小品がまだ手元に戻らない。まあ焦る事は無い。子供を送り出すように、いってらっしゃい。おかえりなさい。