第83回独立展

2015年10月14日(水)〜10月26日(月)
国立新美術館

「フラットノット」F200号

【展誌エッセー】

 いいじゃんなんだって論

大久保 宏美

 20代の頃に観て、なんだかわからないと避けていた絵画が、30年近く経って、コレわかる!解りすぎる!と思える幸せな瞬間がある。と、同時に、その頃描いていた自分の絵を思い起こせば、何故ここで終っているのか、何故これが描けたのか、今はもう判らない。理想を目指して同じようなコトをやってきたとしても、もう確実に変わっている自分がいる。その時にしか感じ得ない、その時の自分にしか生まれ得ないモノは日々刻々と変わりつつあるのだ。
 モチーフがあるわけでもなく、過大なテーマも掲げず、コレといったメッセージも織り込まず、ただ、絵画でしか表現できない何かを求めて画面に向かっている。言葉にするそばからウソになる。言葉を重ねれば重ねるほど本質からズレてゆく。しかし、ちょっとした言葉のやりとりで、あ、この人は解ってくれている、ということが即座に判る時がある。そんな僅かな、解ってくれる希少な人に届けるために、絵を描いている。